【トピックス】2018.3「シャンハイ・スタバ・ロースタリー」は中国国際輸入博覧会へのプレリュード

 2017年12月6日午前7時、米スターバックスの創業者ハワード・シュルツ氏自らが扉を開けることで、アジア初、世界で二番目のハイエンド珈琲店「スターバックス・リザーブ・シャンハイ・ロースタリー」(以下、上海・スタバ・ロースタリー)がグランドオープンした。
 同店は急速に人気を集めており、上海の新しい観光スポットになりつつある。

上海・スタバ・ロースタリーとは

 カフェスペースだけでなく、焙煎、商品販売、図書室などを融合させた体験型カフェ。既にシアトルに1号店があり、上海が2号店。
【所在地】静安区南京西路789号 興業太古匯 N110-N201
【店舗面積】2,787㎡(2階建て)
【営業時間】月曜~日曜の10:00~22:00

従来のスターバックスと何が違うのか

1.スタバ史上世界最大の焙煎キャスク
 スターバックスで世界一となる焙煎エリアには、巨大な焙煎キャスクが置かれている。高さ8m、直径6m、重さ4㌧で、表面には1,000文字以上の金色の篆書が刻まれている(写真)。
ここでは世界30ヶ国以上の国から調達したコーヒー豆が焙煎され、店内で提供されたり包装して販売されたりするほか、他のスターバックス店舗にも提供される。
1階と2階にもそれぞれ大きな焙煎機が1台ずつ設置してあり、1回で最多120㎏のコーヒー豆を焙煎できる。

2.“コト消費”のプラットフォーム
【AR体験】来店者は専用アプリをインストールしたスマートフォンのカメラで店内を映すと、その映した場所や器具に関する解説が表示される。
【O2O】好きな商品があれば上述のアプリを利用してその場でオンライン購入ができる。
【スマホで注文】QRコードをスキャンするだけでオーダーと支払ができる。来店者が店内を散策している間にオーダー完成の知らせが届く仕組み。

3.選り抜かれたスタッフとハイエンド商品
 今回の開店に際し、スターバックスは全国136都市3,000店舗から400名近くのスタッフを選抜。多数のマスターレベルの「黒エプロン」だけでなく、世界で合計97名しかいない焙煎師「レザーエプロン」8名も在席。
 商品約60種類のうちコーヒーは8種類、ティーは20種類、酒類は10種類(ビールやワインなど)。
イタリアの人気ベーカリー「プリンチ」の菓子パンなど80種類も登場するほかベルギー産チョコレートも備える。

政府のサポート

 このように、上海・スタバ・ロースタリーは、焙煎、体験、鑑賞、小売り、飲食業が融合した新しいビジネスモデルである。そのため既存の政策や規定に参考になるものが少なく、青信号もなければ赤信号もなかった。そこで、地元政府の関係部署はスタバ側と協議を重ね、新しいイノベーションチェーンを生み出し、順調開業実現に導いた。

① 設備輸入
 オーダーメイドの外国製設備が多く、輸入の際の情報登録、発送前・到着検査、設置検査などがあり、3年は必要。
➡海外生産時に部品の一部を検査。更に設置時のサンプル検査などを行い、企業と政府がうまく連携することで、1年間以内に手続き完了。

② 食の安全の法的規制
 既存の食品衛生管理、食品生産許可などとかけ離れるため安全確保が難しい。
➡国や市の専門家の力を借りて、「上海市焙煎コーヒー開放式生産許可審査細則」を制定。

③ 就業許可
 海外から11名の焙煎師と調理師を招致したいが、現行規定でコーヒー専門家をハイレベル人材に指定した就業許可の前例がない。
➡入国及び就業ビザに関し、専門家導入用のグリーンゲートを創出。

 本案件を手掛けた上海出入国検査検疫局浦江支局 謝秋慧局長によると、本プロジェクトは、2018年11月に開催する「第1回中国国際輸入博覧会」へのプレリュードだという。即ち“カスタマイズ”と“ビジネスプロセス・リエンジニアリング”をキーワードとして、海外商品の輸入、外国人の入国・就業において、政府関係部署が模索しながら、具体的な案件を一つずつ乗り越えるという決意表明である。

上海市外国投資促進センター日本代表事務所
副首席代表 劉剛
(JCCマンスリー2018年3月号に掲載)